濃いお茶がこわい

ブログ名は、落語「饅頭こわい」のさげ。よく出来た話である。

【読書log】夜の国のクーパー/伊坂幸太郎

猫つながりで、伊坂幸太郎著『夜の国のクーパー』を手に取った。あ、猫が出てくるんすよ。ある時、国が「鉄国」という八年前まで戦争をしていた相手国から支配を受けることとなる。その一部始終を猫が語り、支配される国の人間模様を実況してくれる。猫は、小説の中でも可愛い。しかも、主なる猫がロシアンブルーとは、センスがいい。名は、「トム」と言う。脳内再生で可愛さ増し増し。それと同時並行で、仙台から釣り船に乗って、妻に不倫された公務員がやってくる。公務員が目を覚ますと、トム君が公務員の胸の上にいて、「話を聞いて欲しいのだけど」と話しかけてくる。身体を蔓で縛られ、身動きが取れない。仕方なく、話を聞くことになる公務員。「クーパー」とは、何か。鼠による停戦協定の提案について。支配する側、される側の心中。それぞれの描写に厚みがあり、読後の充足感は申し分なかった。いや、すげかった。

我が家は、家族全員がB型で、てんでばらばらな家族である。お互いのテリトリーを侵すことなく生活してきた。だが、ただ一つ、ルールがある。動物を飼わないこと。飼いたいけれど、それは破ってはいけないのだ。子供の頃から、刷り込まれた価値観である以上、今更破る気もしていない。でも、こうして可愛さに負けて、飼いたい衝動が湧き上がる時は、仕方なく、想像してみる。

日増しに寒さが厳しくなる十一月。朝からしとしと雨が降り、肌寒さから冬を感じる。ようやく仕事を終えて、一人暮らしをしている家に帰ると、玄関先にダンボールが置かれていた。「可愛がってあげてください」というメッセージと共に、黒い仔猫が所在なく、いた。俯き気な仔猫の隣には、少量の水とドライフードが散らばっている。可哀想に、なぜこんなことをするのか。怒りよりも、同情を寄せた。さあ、とにかくお家に入ろう。メッセージの裏を見ると、「申し訳ありません、どうかよろしくお願いします。木下」とある。こちらにも事情があるのだ。遅れて怒りが湧いてくる。「ひどいなぁ。なぁ、そう思わないか?」仔猫に同意を求める。仔猫は欠伸をして、「みゃあ」と鳴いた。

翌日、家の外に小屋を立て、「木下」の表札を付けた。飼うことは出来ないけれど、お隣さん家に、作りすぎた料理をお裾分けすることくらいなら、まぁ、いいだろう。