濃いお茶がこわい

ブログ名は、落語「饅頭こわい」のさげ。よく出来た話である。

【読書log】走れメロス/太宰治

なぜ、メロスは激おこなのか。恥ずかしながら知らなかった。ただ、『走れメロス』は有名すぎて、避けてきたのは否定できない。走れメロスって知ってる?と質問されれば、「あぁ、メロスって走るんでしょ?知ってるよ」って、何食わぬ顔して答えていたかもしれない。では、なぜ走ったのか、その導火線を湿気させてしまったようだ。やはり、知ったように振舞っていたはずだ。実はこういった部分が、私の人生において、蔑ろにしたままにされている気がする。一を聞いて十を知ったような気になっている。良くない。実に、良くない。だから、そうなっていると気づいた時には、できる限り追求をする、そうしている。なぜ激おこなのか、これで知ったことになる。パズルのピースが一つ埋まって、私は、とりあえず「良し」としてみる。

で、早速読み始めてみると、何と…短編集でしたか。「走れメロス」だけの一冊ではなく、その他のお話が載っている。メロスを早く走らせたい。その一心で読み進めてきた。その他も含めてなかなか面白い。特に前半戦はかなり刺激的で、深みのある読み応えであった。太宰治が今この時代も読み続けられているのは、人間の心理変化・状況を弄んでいるからなのではないか。そう考えた。題材を深掘りして深掘りして、二進も三進もいかない、その状況を作り上げた上で心理を浮き彫りにする。その天才だ。その部分に、人間として同化する。

で、走り始めたメロス。驚いたのは、5ページでメロスが走ることになったことだ。大概、小説は読み進めていくうちに徐々に枝葉が一本筋になっていく。短編ではあるが、メロスが走ることになるまでがめちゃくちゃ早い。そこからの疾走感も迫力があった。メロスは、友情と誠実のために走る。三日後の日没までに間に合うように。途中、山賊を躱し、河川の激流を乗り越え、満身創痍になりながらも走る。走る。心のなかで「がんばれ…!」と念じてる。走れ。走る。走れ、ワロスwww

で、メロスは激怒した。