濃いお茶がこわい

ブログ名は、落語「饅頭こわい」のさげ。よく出来た話である。

【読書log】終末のフール/伊坂幸太郎

以前勤めていた職場の同期が結婚した。しかも、国際結婚だ。なので、ささやかなパーティをした。初対面というだけでもよそよそしくなるのに、相手が外人だなんて、余計によそよそしくなった。でも、なんだか仲良く?しているようなので、ちょっと安心して、次第に馴染んでいった。バイタリティ溢れる、下ネタ好きの旦那さんを、たしなめる同期。大変そうだけど、意外とお似合いかも?とは思った。話題豊富な旦那さんから「彼氏、彼女はいるの?」と質問が飛び、「NO」と全員首を振る。その時、一人が「ロンリー」と、こぼした。私は笑ったが、正直、はっとした。「ロンリー」という単語を聞くと、本当に寂しい、切ない気持ちを表しているようで、もうこの先、私を理解してくれる人が出てこないんじゃないか、と思わせた。そんな事は知る由もなく、その後も旦那さんは下ネタを交えつつ、延々と喋った。

彼らと別れた後、私はホテル戻る道中、上京した街の最寄駅に降り立った。何せ、隣の駅だったから。そして、炉ばた焼きのお店に入った。そこで読みかけの伊坂幸太郎の『終末のフール』を読了した。「八年後に小惑星が衝突し、世界が終わります。」と発表されてから、五年が経った世界。当時のパニックが平穏な日常へと落ち着きつつあるなか、あと三年の寿命となった人々。描かれている情景は、希望と強さと、儚さに満ちている。それは、私の、心の奥底にすんなりと入り込んできた。「死」が、みな平等に訪れる。それまであと三年。なんと絶妙な設定か。自分があと三年後に、世界と共に死ぬ。私は何ができるんだろう、と、店を出て歩きながらぼんやり考える。久しぶりに都会特有の、生ぬるい風が身体を触る。次から次へと人が流れてくる。こんなに人がいるのに、確かに私も「ロンリー」だ。世界の終末と紙一重じゃね?なんて、それに見えなくもない気がして。