濃いお茶がこわい

ブログ名は、落語「饅頭こわい」のさげ。よく出来た話である。

「ふふふ」のかわり?

もし生まれ変わるなら、男性、女性、どちらに生まれ変わりたいですか。女性インタビュアーが、街行く男性に質問をする。男性は数秒悩んだ後「また男性がいいですかねぇ。」と照れくさそうに答える。女性インタビュアーはすかさず切り返す、「あなたがまた人間に生まれ変われると思っているんですか?」「え、あ、あ、すみません。」…と、例えばこんなやり取りをみたときに、一定数の女性は「ふふふ」と笑いを表現することだろう。この「ふふふ」がうらやましいのだ。ただ、実際に「ふふふ」と笑う女性をあまり見たことは無く、この場合にも目の当たりにすれば笑い方は「あはは」なり「えへへ」だの、それらの類だと思う。ゆえに「ふふふ」は、たいがい書き言葉として利用されていると認識している。だが、「ふふふ」は当然のように女性に似合う。その感情は、穏やかであり、優しくもある。読み手からは寛容的に映る上に、少し遠目なのだ。男だってそう笑ってみたいときがあるのに。

そこで、なにかいい言葉はないか、考えていた。が、取って代わる言葉は、今のところ見当たらない。しかし、男性しか使わないであろう言葉を見つけた。「へへっ」である。うーん、女性も使うのだろうか。でも、この軽快さと甘え上手な笑い方は、間違いなく若いアメリカ人男性だと思っている。

ディランは、ピザ屋でデリバリーのバイトをしながら、仲間とバスケやスケボーをして、日々を満喫している。バイトが終わると、彼女との待ち合わせ場所であるファストフード店へ向かうのだ。「いまから向かうよ」と、彼女のジャックリーナに電話をかけ、バイクに跨がる。バイト先から三つ目の十字路を左に曲がる。すると、いつも仲間たちとバスケをする公園が左手に広がっている。前方で、女友だちのニコラが手を振っているのが見えた。近くまで行き、少し手前でブレーキをかける。「おう、どうしたの?」「ちょうど良かったわ。ジェイクから来月のバスケの試合の日程と、詳細を預かっていたの。はい、これ。今日練習あるみたいだけど来れる?」「いや、今からジャッキー(ジャックリーナのあだ名)とデートなんだ。うまく言っといてよ」にたにたしながら言うディランに、「あーそう、仲いいわね、あんたたち。毎日会ってて飽きないの?」わざとうなだれた様子でニコラは言う。「へへっ」とディランは笑い、じゃ、と言って別れた。

この「へへっ」だ。ここで「へへっ」は、きっと女性は使わないだろうと思うのだ。だが、ここで大きな問題に直面する。このように軽快でいて甘え上手な「へへっ」を日本人男性が使いこなせるのか。むしろ、女性が使った方がもしかしたら、ボーイッシュでかわいい、ということもありうる。そこで思いついたのが「うへへ」である。どうだ、実に陰湿な印象だろう。この、じめじめとした笑い方は、日本人男性に誠に残念だが馴染む気がする。文章の中で使いこなせる気は今のところしないし、「ふふふ」の男性版としては全くもって魅力的でない。「へへへ」としても良さそうなものだが、それでは味気ない。例えるなら、デパートのチェックシャツを着るようなものだ。「ふふふ」にはどこか余裕があるのに、「うへへ」には余裕もくそもなく、狭い器量の中で何かが自身の思い通りなる快感を味わっているようにしか見えない。けれど、男性にしか似合わない笑いとなると、恐らくこの「うへへ」がぶっちぎりで一位な気がする。ここまでページ(電子だけどね)を割いておいて、結果「うへへ」だった訳だが、「うへへ」って、どうやって使うのだろう、という課題が残る。ここで女性なら、ふふふ、と笑い避けられる局面を、「うへへ」では「まだ課題やってないんだよね」に聞こえる。もし生まれ変わるなら、やっぱり女性だ…ナ。