濃いお茶がこわい

ブログ名は、落語「饅頭こわい」のさげ。よく出来た話である。

【読書log】3652/伊坂幸太郎

 ユニーク。この言葉がぴったりの小説家に出会った。本屋大一位に輝いた、ゴールデンスランバーを読んだとき、そう思った。そこから伊坂幸太郎のセカイに引き込まれた。初受賞作、オーディボンの祈りは、ヘンテコな話なのに(すみません…独自性が高い、でした)読む手が止まらず、このときから居酒屋にひとりで入ってはカウンターで呑みながら読書するたのしみができた。なにより、こんなに面白い小説を書く人がいるのだと、うれしくなった。ずっと小説しか書かない人なのかと思い込み、本屋さんで新刊が出ているのを見ると、また文庫がでるぞ、とワクワクしていた。もはや、全幅の信頼を置くシェフのような存在であり、作る料理はすべて「参りました、敵いません」というくらい美味しくも楽しい食事のようである。

 先日、大型の本屋さんに立ち寄った際、伊坂幸太郎の棚を見ると、なんとエッセイが出ているではないか。しかも、四年も前に…。いやはや、今までの固定観念を覆されてはいたものの、呆然と立ち尽くすこなくすぐさまレジへ。どんなエッセイをかくのだろうかと、ニヤニヤしながらカフェに入った。予想以上に温かい文章に、とても好感を抱いた(伊坂幸太郎にとっては、面白くないことかもしれないが)。取り繕うことの少ない、素直な人柄に思えたからだ。この小説家の小説を好きでよかった、と思う。