濃いお茶がこわい

ブログ名は、落語「饅頭こわい」のさげ。よく出来た話である。

【読書log】七つの会議/池井戸潤

噂は真実から離れていくものだ。それをここ最近よくよく感じる。私は弓道をやっているのだが、所属支部とは異なる支部へと足繁く通っている。すると、良く思わない人々が出てくる。「あいつは、他の支部の先生への元へと習いに行っている」と噂は広まる。ここまでは真実。問題はその先。「所属支部の先生を尊敬していない。どちらの弟子なのか」と少し尾ひれが付いてくる。私の環境や発想、つまり、通っている理由については面白可笑しく脚色されていく。まぁ、、それだけ、他の支部の先生へ習いに行くことが良しとされないらしい。くだらん。

池井戸潤著『七つの会議』。この会社にはある秘密があった、って、コピーにちょっと惹かれて買ってみた。七つの会議を中心とした描写から、その秘密へと迫っていく。会社には大小様々な秘密…嘘がある。嘘とまではいかなくとも、確かに、グレーゾーンは存在する気がする。私が知らないだけで。秘密を隠す側と、暴く側。さて、どちらが正義なのか。近年、「企業がお客を選ぶ」というキーワードが蔓延っている。とりわけ飲食店・小売店などで良く見られる。でもそれって、会社側の事情の、すり替えではないか。ちょっと前まで「お客様第一!」とか言ってたくせに…。「いや、弊社のコンセプトを理解してくれたお客様への、最大限の価値・サービスを提供することがこれからの…(ry」

でも、これって、もの凄く繊細なことで、超絶ムズイ気がしてるんですよ。商品やサービスの価格や内容を軸として、商品デザイン、製品イメージなどを利用して、宣伝・口コミなどを駆使して伝えていく。けど、伝えようとして伝わることなんて、ほんの一握りでしかない。そんな気がする。だからこそ、伝えていく。反対に、だからこそ、秘密にしてみる。あとは、受け取る側の自由だと。ひょっとしたら、隠し通せるかもしれない。もしかしたら、暴かれるかもしれない。本意である出発点から末端へ行くに従って、その本意から逸れていく。的を狙い飛んでいく矢も、ど真ん中へ向かう矢以外は、的から逸れていくものだ。その出発点と着地、逸れていく過程を味わえる小説だと思う。