濃いお茶がこわい

ブログ名は、落語「饅頭こわい」のさげ。よく出来た話である。

【読書log】望郷/湊かなえ

お久しぶりです。ご無沙汰しております。と、言えば、連絡をしなかったことも帳消しである。「連絡はしなかったけど、会いたかったですよ(あなたのことを案じていたのですよ)」となる。日本語は、本音と建前で構成されている。難しい(てか、めんどくせぇ)。その言葉の真意まで到達しようとする心のさもしさよ。あー、もー、ストレス。

湊かなえ」と言えば『告白』で有名になった作家である。その代表作を差し置いて、『望郷』を手に取った。白綱島、という島を舞台に、繰り広げられる6つの物語。「島」という閉鎖された空間と、そのなかで生活を営む人々の胸中。本土へ出る者、島に残る者、本土へ出て島に戻る者、本土から島へ移住する者。「島」という舞台が、これほどまでの広がりを見せるのか!と驚き、また、ミステリーとしても十分なものであった。最後の話は、心揺さぶるものがあったりもした。田舎を離れて、また田舎に戻った私からすれば、共感できる場面が多かった。

いっそ、私も小説の中に入りたい。そうすれば、いやでも物語は進み、いろいろなことも起こって、洒落たセリフも言わせてもらえるかもしれない。間違えれば、殺人をすることもあるかもしれないが、私の狂気や思想は読者の元へ届くはずだ。つまり、月並みな言葉を使えば、私は孤独だ。だれも、その心の奥底に辿り着かない。逆に、何も心の琴線に触れない。宙に浮いて、頼りない存在と化している。だれの責任を取るわけでもなく、私は生きている。今を最高に生きるために何かをしたいのに、その気力も、その目的もない。ただ、呼吸を止めたりはしない。