濃いお茶がこわい

ブログ名は、落語「饅頭こわい」のさげ。よく出来た話である。

【読書log】ジャイロスコープ/伊坂幸太郎

訳がわからないけど不快感はなく、むしろそれに興味を抱いている状態を、仕方なく“不思議”と表現している。まさに不思議だった。普段の想像力では到底辿り着けない境地まで、『ジャイロスコープ』は連れていってくれている。それが面白かったかどうかは、私は言及を避けておく。

正直、連れて行ってくれた時点でどっちでもいい気がしているからだ。伊坂の『3652』で書かれていた、「小説は小宇宙への旅」とすると、その小宇宙が良かったかどうかは大して意味のないことなのではないか。行ったことのない場所へ行く、それも思いもよらない道順で行く、不安と期待が綯い交ぜになった思いを久しぶりに味わった。

何より『ジャイロスコープ』は、伊坂幸太郎の十五周年記念の一環として纏められた一冊(七つの短編集)である。十五周年か、と、何故か私も感慨深い。デビュー当時からの追っかけでも無いくせに。だから付け加えておきたい、伊坂さん、十五周年おめでとうございます。これからも楽しみにしています。